社会生活を続ける上で、所有している資格が重要な切り札になる時がある。但しその評価は絶対的なものではなく、評価する側の資格への認知度や価値観により相対的なものであることが多い。
自分の経歴を表す上で最も主張したい所有資格の名称が据えかえられてしまうことは、評価する側の認知度に多少なりの悪影響を及ぼす事にはならないだろうか。
私が昔取得した第二種情報処理技術者という資格がそんなむず痒さを感じさせる資格である。
第二種情報処理技術者試験とは
第二種情報処理技術者試験というのは、合格者に対して情報処理の技術を習得していることを認めるために実施していた国家試験である(たしかこんな定義だった)。
対象は、経験一年以上の一般プログラマーを想定。
現在は「基本情報技術者試験」という名称になっているが、旧名称の第二種情報処理技術者試験の合格者としては、何故いちいち試験(資格)の名前を変える必要があったのか甚だ不思議なものだ。
想像するに、現代の情報処理に係る技術は広い分野へ発達しており、そうした各々の専門知識の習得者に対しても評価するシステムを構築したかったということなのだろう。実際にそんな説明だったと記憶している。
だからといって「第二種」と呼んでいたものをいちいち「基本」に変える必要など微塵も感じないし合格者にとっては迷惑な話だ。
努力して手に入れた資格の名称が変わるということ
自分が苦労して手に入れた大切な資格が、ある日「次の試験から制度を改正して名称も変えます」などとやられたら、はたしてどんな気分か。
資格の名称が変更されれば、旧名称での一般に対する認知度は数年で下がることだろう。
古い呼び名まで記憶に残るのはその専門分野に勤めている人に限られてしまう。
簡単に言えば、「知ってる人は知ってるけど、その道に関わらない人には分からない無意味な存在」と化してしまう。
知識のある専門家には「ああアノ基礎知識を評価する資格ね」(二種情報に例えれば)と辛口な評価を受け、その反面、世間一般的には名称が変わって通用しなくなり「名の通らない資格」に成り下がることになる。
この場合、当事者にとっては資格取得に捧げた時間と費用は無になり、現行の資格の価値を知っていても制度の変遷を知らない人には能力を認めてもらえないと思ったほうが良い。実に虚しい気持ちでいっぱいだ。
現行の基本情報技術者を取得すればいいという人もいるかもしれないが、普通は一度試験に合格したらそれを基に特定の専門知識の習得に専念したいもので、一度合格している同等の試験に使う労力など社会人にはない。
いい加減に名称を戻してくれないか
情報処理技術者試験の名称が変更になったのはもうだいぶ昔のことで、今となっては所持している資格を人に話す際に多少の説明が必要になっている。
基本情報処理技術者という新しい名称になったことで、元の第二種情報処理技術者試験の合格者が得たメリットなど一つもないと言える。むしろ、生じてしまった不利益に対してどう繕うかという問題が継続しているままだ。
私と同世代の資格取得者は、組織の中で管理職等それなりの地位に就いたり経営に携わったりという方も多いことと思う。しかし、私たちの過去の経験に対するささやかな評価を公の権力を持って(というか何も気にせずに)振り出しに戻してしまうのは我慢できない。
私の中で情報処理の知識は薄いものとなり、それに反し技術は著しく進歩をはたしていく。
しかし、私の社会人としての経歴の中では情報処理という分野で評価されるべく知識を深めた時期があるということは事実だ。それは専門分野に所属する人に限らず多くの方へ評価してもらいたい部分なのだ。
第二種情報処理技術者試験は基本的な知識を問う試験であった。だが私にとってその基本的な知識の取得は人並み以上の労力を要するものだった。
より能力のある方にとっては所詮入門者向けの資格試験だったかもしれないが、この試験に合格できたことを「自身の努力の成果と証」と位置づけている人も少なくないことだろう。
今後、試験制度を改正する場が訪れるならば名称はもとの「第二種情報処理技術者」へ戻してほしい。
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